その晩は一睡もできなかった。


それなのに、残酷なほどに普通の朝がやって来るんだ。


ずっとスマホを握りしめていたせいで手のひらが痛い。


「お姉ちゃん…」


一晩中繋がらなかった電話に、もう期待することはできないけれど、それでも…。


それでも、もしかしたら…と淡い期待を抱いてしまう。


何度発信ボタンを押しただろう。


何度期待が裏切られただろう。


それでも電話をかけることをやめられない。


「…大丈夫」


お姉ちゃんはまだ生きてる。


お姉ちゃんが死ぬわけない。


殺されるわけない。


…でも。


お姉ちゃんはキャバ嬢だ。


危険な付き合いがないとは言い切れない。