急いで洗面所に駆け込もうとしたあたしの手を深景さんが掴んだ。


「離して…!」


振り払おうとしたけど、力じゃ叶わなかった。


「あたしは貴方のセフレ。

彼女でもなんでもない。

そんなの、分かってるから…。

だから…っ。

セフレにはセフレらしく接してよ…っ。

こんな豪華なホテルに連れてきて、夜景を見せて、思わせぶりな発言ばかりして、あたしをからかうのも大概にしてよ…!

そりゃ、勝手に勘違いしたあたしが悪いよ…?

でも…っ。

……こんなところ、連れてきてほしくなかった。

勘違いしちゃうじゃん。

あたし、バカだから。

女慣れしてる深景さんと違って、慣れてないから。

不慣れな女を弄んで楽しい?満足?

お願いだから、もうからかわないでよ。

深景さんの何気ない一言で、勝手に舞い上がって、勝手に落ち込むの、もう嫌なの。

深景さんは、唯さんが好きなんでしょ?

だったらもうそれでいいじゃん。

変にあたしと関わらないでよ。

あたしはただのセフレ。

そうなんでしょ?」