涼はそう言ってあたしの頭を撫でてくれた。


「…涼、ホントにありがとね」


「俺は何もしてないよ」


そんなことない。


涼が深景さんに本気でぶつかってくれたから。


あたしの想いを代弁してくれたから。


どんなに凄まれても反論し続けてくれたから。


だから、深景さんの頑なな気持ちが一ミリだけでも動いた。


全部涼のおかげだ。


「…俺、帰るね」


涼の瞳は濡れていた。


このまま消えてしまいそうなくらい、力なかった。


「……またね」


あたしに引き止める権利はない。
 

これ以上涼を傷つけるわけにはいかないんだ。


もう、これ以上…。