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「いやー、おもしろかったねー、映画」
正直、何の映画を観たのかも思い出せない。
涼はさっきの約束を忘れたかのように呑気に伸びをする。
ラブストーリーだったことは唯一覚えている。
「もう9時じゃん。何か食べに行く?それともやめとく?」
夜遅くに食事することを懸念してくれてるのか、単にはぐらかそうとしているのか。
「…食べに行こ。ここの7階に美味しそうなお店があった気がする」
絶対に逃がさない。
お姉ちゃんの情報を聞き出さなきゃいけない。
あたしは、絶対に犯人に復讐しなきゃならないんだ。
「いいよ、そこ行こっか」
上りのエスカレーターに乗ると、涼は必ず後ろに立ってくれる。
道を歩くときも、絶対車道側を歩いてくれる。
この優しさは…本当なのか、この優しささえも意図的に作られたものなのか。



