伊波君……検事になりたいんだ!?凄いなぁ……。
俺も教師になりたいという夢があるけど
 弁護士なんて司法試験を合格するのも大変なぐらい狭き門だ。

「凄いねぇ……どうして検事を目指したの?」

 どうしても気になり目指した理由を聞いた。
俺は、施設育ちで周りの家族連れや話が羨ましく
 寂しくなっていた時に優しくしてくれた女性の先生に
憧れて目指すようになった。俺もあんな風に
生徒に優しい先生になりたかった。
 すると寂しそうな表情で笑う伊波君だった。

「……僕の兄が刑事だったんだ。凄く優しく明るくて
年の離れた弟の僕のこともよく面倒みてくれた。
 でもある事件からか病んじゃって自殺したんだ。
その事件も曖昧なままだし……僕はね。
 兄が刑事として裁いたように。自分は、自分の
やり方で罪を犯した人を裁きたいんだ!」

「君のお兄さんが……刑事って……?」

伊波君の真剣な言葉に一瞬ある人物を浮かんだ。
 まさかと思ったが……もしかして?
すると伊波君は、僕の顔をジッと見てきた。えっ?

「松本君に話を聞いた時に驚いたよ。
 まさか……あの人のお店でバイトをしているなんて。
あそこの店長さんは、僕の兄の元同僚で幼なじみなんだ」

予想が……的中した。
 やっぱり伊波と聞いた時にまさかと思ったが
彼は伊波亮(いざなみりょう)の弟さんだ!!

 世の中は、広いようで狭いと言うが本当に
こんな偶然があるなんて驚きだ。
 元と言っていたから辞めたのかな?と思っていたが
まさか自殺をしていたなんて……。

「じゃあ君は、神崎さんを知っているんだね?」

「まぁね。兄の幼なじみだから僕とも幼なじみになるし
 家にも何回か遊びに来て一緒に遊んでもらったよ。
兄もよく神崎さんの話をしてくれた。凄く
頭が切れて才能がある人なんだって……。
 僕は……あの頃、海外留学に行っていて居なくて。
知らせを聞いて帰国した時には、すでに亡くなっていた。
 兄の様子もおかしかったと聞いて……信じられなくて。
しかし確かめる前に神崎さんも刑事を辞めてしまった。
 多分。責任を感じたんじゃないかな……」

じゃあ……やっぱり神崎さんが刑事を辞めたのって
 伊波君のお兄さんが原因だったんだ!?
だからお父さんである警視総監があんな表情を……。
 神崎さんも様子がおかしかったし。

「僕は、あの事件が兄を変えたんだと思う。
 でも自分に刑事になるほど体力も運動神経も無くて
だから唯一勉強が出来たから……それで検事になって
兄みたいな人を増やさないようにしたいんだ。
 立花君。僕が会ったこと……神崎さんには、
秘密にしてもらえないかな?僕もあれ以来……気まずくて
 会えていないし、きっと会ったら神崎さんも
兄のことで僕に対して罪悪感を抱くだろうからさ」