「警察は、ともかく……証拠がないなら
こちらから餌をまくしかあるまい」

「餌をまくってどうやって?」

 俺は、神崎さんにそう尋ねてみるが、何だか
嫌な予感がする。こういう時は、ろくなことがない。
 すると神崎さんは、俺を見るなりクスッと笑った。
あっ……やっぱり。

「立花。お前……女装してその婚活パーティーに
参加して来い。そして岡原慶一に近づけ」

 はい!?何で女装?
婚活パーティーに参加して来いは、分かるけど
 何で俺が女装をしないといけないんだ?
神崎さんの爆弾発言に唖然とする。

「いやいや。ちょっと待って下さいよ?
 婚活パーティーに参加だけでいいじゃないですか?
どうして俺が女装なんか……」

「婚活パーティーに参加してもお前が男だと
声すらかけにくいだろーが。あの男の目的は女だ。
 心配するな。お前は、背も男にしては小柄だし
顔も童顔だからメイクで、いくらでも誤魔化せる」

 いやいや。そういう問題ですか?
何冷静に俺の分析をしているんですか。
 いくら顔が童顔でも絶対にバレる。

「無理ですよ……女装だなんて。俺嫌ですからね?」

「もしやったら……そうだな。
 今月の給料を上乗せしておいてやる。
これぐらいならどうだ?」

神崎さんは、そう言うとパッと近くにあった
 電卓を取り出して打つと俺に見せてきた。
うっ……そんなに!?

思わず心が揺らいだ。それだけあれば生活に助かる。
 しかし女装だ……バレたら終わる。でも……。
結局、散々悩んだ挙げ句俺は、渋々引き受けることになった。
 まさか、こんな事で女装をするはめになるとは……トホホ。

 そして俺は、婚活パーティーサイトに登録する。
名前は、藍沢加奈子(あいざわかなこ)23歳。
 実際にいる藍沢製薬会社の令嬢の名を借りた。
もし検索されても大丈夫なようにしておいてくれた。

婚活パーティー当日。女装して会場に向かった。
 神崎さんが、用意してくれたワンピースに着替え
宝石のアクセサリーと黒髪のロングヘアーのウィッグを
メイクは、カリスマ美容師にやってもらった。