「先輩~呑気に言っている場合ですか!?
 あの後……大変だったんですからね。
肝心な篠田は、死亡するしキャバクラの経費が
 高過ぎると怒鳴られるし落とせないから自腹で払えと言われるし……先輩。これうめぇ!!」

瀬戸さんが半べそになりながらも自家製のナポリタンをガツガツと食べていた。
 ちなみに、ここのナポリタンは、名古屋風の鉄板ナポリタンだ。
 ナポリタンの下に卵焼きが敷いており濃厚なケチャップの味と相性抜群だ。
 しかしあれ……やっぱり経費で落とそうとしたんだ?神崎さん……。

 そりゃあ落ちる訳がない。いくらなんでも
経費で数百円も使ったのだから。
 瀬戸さんが気の毒に思えた。自腹にされたら可哀想だ。
 俺は、皿を洗いながらそう思っていた。だが
神崎さんは、気にすることなく笑っていた。

「それは悪かったな。心配するな。
 どーせ落とせないと最初から思っていたから
その代金は、俺が立て替えてやろう」

「本当ですか!!先輩……」

嬉しそうに目を輝かせる瀬戸さんを見て
 いやいや。元は、神崎さんが支払わないといけないやつですよ!
 そうツッコミたくなったが、あえて言うのはやめておく。
 喜んでいるのに突き落とすのも悪いし。

ハァッ……とため息を吐きながら最後のお皿を洗い終らせた。
 するとその時だった。1人の30代前半ぐらいの
女性がお店に入ってきた。
 黒髪のストレートで雰囲気も服装も大人めな感じだ。

「あ、あの……突然すみません。ホームページで
探偵事務所をやっていると見たのですが……」

どうやら探偵としての依頼らしい。
 モジモジしながらスカートをギュッと握り締める女性。
 どうやら内気な性格なのだろう。
すると神崎さんは、冷静な表情で
 「ここは、ドアの貼り紙の質問に答えた人しか入れない。
では問題『2020年総理大臣の名は?』」と問題を出した。

 えっ?ちょっと神崎さん!!
探偵の依頼で来ているのに何問題を出しているんですか?
 その女性もいきなりの問題に驚いてオロオロしていた。
あ、ほら……困っているし。

「あ、えっと……安倍○三です……」

「正解。どうぞ……席に。
 今は、お客も居ないから気軽に相談が出来ますよ」

正解したのでニコッと笑顔で招き入れる神崎さんだった。
 瀬戸さんも居るんだけどな。
どうやら瀬戸さんは客にカウントされてないようだった。
 女性は、オロオロしながらもカウンターの席に座った。
瀬戸さんと1つ飛ばした席に。

「ご注文は?」