私の日記

         ♥

「葉月、昨日の話題なんだった?」

「昨日…?んー…思い出してるから待って」

苦笑しているその子は葉月(仮)。

優多くんと通学路が同じで、いつも恋について探ってくれる。

まぁ、人見知りな所もあるから、その話が流れ込んでこない限り、葉月からの報告は来ない。

だから、毎朝「昨日の話題」を聞くのだ。

「あ、思い出した」

「なになに!?うちのこと話してた!?」

「してたけど…聞かない方が…」

「いいの!」

マイナスなことでもいい。

ちょっとでも聞きたい。

「うんー…」

「お願い!」

「わかった。あのね、2年の先輩が居たんだけど。」

         ♥

葉月と優多の他に、2年の先輩が1人。

3人で帰った時の話だった。

「トゥットゥルー」

鼻歌で歌う優多。

「それ、なんの歌?」

「恋の歌」

葉月と優多との話に、先輩が乗り込んだ。

「なになに、誰思ってんの?」

にやける先輩に優多は苦笑いしながら、

「誰も思ってないっすよ」と言った。

「あれ、優多彼女いる?」

「居ないです」

その答えは即答だったと言う。

「優多?」

葉月が気になって優多の顔を見るが、照れた様子もない。

「なに?」

「あ、なんでもない…」

不思議そうな顔で見てくる優多に、葉月は作り笑いで返した。

        ♥

その話を聞いた私は、床に座り込んだ。

「…。」

「ほ、ほら、だから言ったでしょ?聞かない方がいいって!」

「も、もしかしたらさ!恥ずかしくてそう言ったかもよ!?」

一生懸命私の気持ちを助けてくれる。

でも、ネガティブな気持ちには勝てなかった。

「はは…もう…好きじゃ…ない…」

笑いながら涙をこらえた。

「大丈夫だって!!」

そんなこと言ったって…

私は2週間前にも…

         ♥

ある日の火曜日。

席替えの前の日だった。

優多の隣の席は男子。

その男子が優多にふと聞いた。

「なぁ、優多って好きな人いんの?」

「…ん?」

私はドキリとした。

もし、「いる」って言ったら…

でも、私の予想通りの答えは来なかった─

「好きな人。」

「あぁ。いないよ。」

         ♥

「諦めようかな」

ははっと笑ってみたけど、葉月にはお見通しみたいだった。

これ以上無理はしたくなかった。

「トイレ行ってくるね!」

私はトイレに駆け込んだ。

誰も居ないことを確認して、ひとりで泣いた。

「愛ちゃんー?愛ちゃん?」

葉月の声が聞こえた。

でも今は、声が震えちゃう。答えられない

「愛ちゃん〜居ないの?」

ドアが開いた。

「あれ……居ない。」

咄嗟にドアの後ろに隠れた。

もしこれで見つけられたら、笑って誤魔化そう。

「葉月ちゃん何してんのー?」

汐梨ちゃんの声が聞こえた。

「愛ちゃん探してるんだけど…ちょっと用があって!」

「愛ちゃん?知らないやー」

「さっき階段降りてた人、愛ちゃんじゃなかった?」

「えー?」

2人の声が聞こえる。

声も息も抑えて…。

「愛ちゃん下行ったのかな、じゃあ。」

「そうだよ!ちょっと手伝って欲しいことあるから、来て!」

やっと居なくなった…。と思ったけど、早く出ないと、先輩も来てしまう。

涙をふいて、余裕を持って外に出た。

「あれ、愛ちゃん!どこ行ってたの?」

葉月が話しかけてくる。

「ちょっと先生見かけたから、下で話してた!」

そうやって誤魔化した。

これからも、誤魔化せるだろうか。

「座れー」

先生の声が、また教室に響き始めた。