彼女は「え」と呟き、涙に濡れた目を上げた。

「白い、糸? 赤い糸じゃなくて?」

「ハハッ、そうです。白い糸。天使はそれを"想いの糸"と呼んでました」

「……天使」

「そう。その糸で繋がれていたから、俺は二週間もあなたと離れられずにいたし、元々霊感のない花純さんにもゴーストの俺が見えた……」

 花純さんは僕の言葉など、どこ吹く風であさっての方向を見て、顔をニヤつかせた。

 天使と聞いて、またトリップしてるな……?

 彼女らしいなと思い、また頬を緩めた時。

 ガラガラ、と病室の扉が無遠慮に開かれた。

「蓮くん、おはよーう! 寝過ぎて体(なま)ってんじゃない??」

 ハイテンションで現れたのは樹だ。

 まだ学校がある時間帯のはずだが、早退だろうか?

 彼は僕と花純さんの間に漂う雰囲気を察して、頬を緩ませた。

「なに? 告白、うまくいったの?」

 本人を目の前にして聞いてくるのが、樹スタイルだ。

 僕は右手を上げて、彼にピースサインを送った。