「い、良いんですか??」

 花純さんは真っ赤な顔で、コクンと一つ、頷いた。

「……っ私も、好き、だからっ」

 うわ……っ、やべっ。

 まさかの両想い……??

「私も。ずっとずっと……好きだったから、"王子さま"の事…」

 って。

 ん……??

「王子さま……?」

 なにそれ?

「〜〜っ!? あッ! いえ。何でもないです、忘れて下さいっ」

 え。もしかして、俺のこと??

 何となく面映(おもはゆ)い気持ちに満たされた。

 彼女が僕を美化して、そんな風に想ってくれてたんだとしたら……正直いって嬉しい。

 二人して赤面しているのも恥ずかしくて、僕は視線をふわふわと泳がせた。

 すぐ隣りの棚に花瓶が一つ置いてあり、そこに生けられた三本の赤いバラに意識が向いた。

 ピンク色のかすみ草をバックに携えて、真紅の花びらを品よく広げている。

 赤いバラ……。

 これまで何度も見てきたその花に、なぜそう思ったのかは分からない。

 気付いた時には、僕は記憶に蘇る妙なワードをポソっと呟いていた。

「赤いバラの、王子さま……」