「そう、だよね。キミ、見たところまだ小学生低学年だもんね……。まだまだやりたい事、いっぱいあったよね。その幼さで、お母さんとも離れなくちゃいけないんだもんね……」

 僕は呆気に取られた。

 お姉さんはあろう事か瞳を潤ませ、急にシクシクと泣き出した。

 なんて言うか、感情表現の激しい人だ。

 可哀想に、と同情されているのは構わないが、とりあえずここにずっと立っている状況をどうにかして欲しい。

 このままだとこの部屋の戸口に足が埋まって地縛霊にすらなりかねない。

 泣いたままのお姉さんを暫く見守り、僕はため息をついた。泣き止んだ彼女はテーブルに置いたティッシュで鼻をかんだ。

「泣いちゃってごめんね?
 て言うか、現実問題。私幽霊って見たの初めてなの。霊感とかそういうのは自分でも全く無いと思ってたし」

『……はぁ』

「ホラーとかオカルト的な番組はどっちかと言うと好きなんだけどね、肝試しで実際にお墓とか廃墟とかに行くのは断固として反対なの。
 今日だって特別変わった事はしてないし、だからキミが……何で私の部屋にいるのか分からないの。
 この部屋だって、別に事故物件とかそんなんじゃないのよ? 部屋を借りる時にちゃんとネットで調べたし、不動産屋さんにも再三確認したし。
 もうね、幽霊が出る意味すら分からないの」