気付いたら、僕は花純さんに恋心を抱いていた。

 彼女と共にいようと決めてから数日が経ち、出会ったあの夜から今日でちょうど一週間が過ぎていた。

 水曜日。

 花純さんは学校帰りにバイト先の花屋に寄り、いま現在仕事に勤しんでいる。

 ちなみに表情は暗い。

 接客の時こそ、明るく笑顔を振りまいているが、お客さんがはけると途端に悲しそうな顔をし、重いため息を吐き出していた。

 原因は分かる。

 一週間に一度しか現れない、水曜日限定の"赤いバラの王子さま"だ。

 先週に引き続き、今週も来なかったらしい。

 すっかり意気消沈した彼女は、帰りにスーパーに寄り、大量のお惣菜を買い込んで帰宅した。

 先週はやけ酒にしたから、今週はやけ食いをするつもりなのだろう。

 好きな人の事となると、極端に情緒不安定になる彼女が少しだけ心配になる。

「運命って残酷ね」などとボヤき、机いっぱいにお総菜のケースを並べる。

「きっと王子さまは、毎週バラを贈っていた彼女と……結ばれたんだわ」

 花純さんはそうと決まったわけでもない事象にも意味を見出し、ストーリーを組み立てていた。