「最初に言っておくと、私に取り憑いたって何にも良い事ないからね? 私はキミのお母さんにはなれないし、あと、……えっと……」

 続ける言葉が思いつかないのか、彼女は眉を寄せて言い淀む。

「とっ、とにかく。早く天国に行ったほうがいい。キミみたいな純粋な子供は天国行き間違いないだろうから、うんうんっ、その方が絶対いい!」

 大袈裟に手でジェスチャーを交えながら、彼女は懸命に訴えていた。

 可愛い顔に似合わず、饒舌な人だ。

 パチパチと瞬きしながら、僕は冷静に考えていた。

 そういえば、僕は子供……なのだろうか?

 さっき彼女とすれ違った時、僕の背丈は彼女の胸元に届くか届かないかだった。

『あの、』

 僕はその場に立ち尽くしたまま、彼女ーーお姉さんを見て言った。

『天国ってどうやって行くんですか?』

 お姉さんは目を見張り、片手で顔を覆った。

 そうきたか、とでも言いたそうだ。

『オレは……死んだんですか?』

 仕方なく、質問を一番シンプルなものにすげ替えると、お姉さんは僕を見つめて悲しげに眉を垂れた。