気付いたら見知らぬ部屋に立っていた。

 ともすると、ふわふわと浮かびそうな両足をグッと踏ん張って瞳だけで周囲を見回した。

 間取りから、誰か一人暮らしの部屋だと理解する。

 白い天井と壁を目で捉えて、そばには大き過ぎない箪笥(たんす)があった。

 箪笥の上には可愛らしいぬいぐるみが三体。クマとブタとペンギンのそれが座っている。

 白いテレビ台の上には薄型のテレビが点けっぱなしで音声を放っていた。

 ピンク色のコタツテーブルの上に、空いた缶が三つ。ラベルを見るからにお酒だ。

 置いた家具や雑貨の雰囲気から女の人の部屋だと理解する。

 何でこんな所に?

 記憶なく、誰かの手によって勝手に連れて来られたと思い込み、とにかく部屋から出ようと玄関へと足を出す。

 視界に映った手足は小さく、言いようのない違和感を覚える。

 僕は首を傾げた。

 と、その時。すぐそばのドアからジャーっと激しい流水音が聞こえて扉が開いた。

 眼前にそれが迫り、ぶつかると思った拍子に俯くが。

 ぶつけたと思った頭は不思議と痛くない。

 あれ?

 トイレから出て来たのは若い女の人だった。

 ピンク色のTシャツにハーフパンツ姿のラフな格好で、長い髪を二つに結んでいる。