気付いたらすっかり朝を迎えていた。眠ったかどうかの感覚すらない。

 幽霊って一体どうなってるんだ?

 次々と起こる不可思議な現象には首を傾げるばかりだ。

 僕は子供らしいが、自分の顔を見る事はできない。

 当然ながら、鏡に映ることもない。

 ただ、視野が花純さんより低いことと手足が小さいことから子供なのだろうと判断した。

 実際、花純さんには八歳か九歳に見られている。

「ん、うぅ〜ん……っ」

 やがてノソノソと花純さんが起き上がり、グッと伸びをした。

 座ったまま天井を見上げて、「よく寝た〜」と呟いている。

 どうでもいいけど。

 若い女の人がよくそのまま床で寝れるな……?

「あぁ、でもちょっとだけ体が痛いやぁ……」

 当たり前だろ。

 布団で眠れば良いのに、急に電池が切れたみたいに寝ちゃうんだもんなぁ。

 僕は座ったままで、呆れて彼女を見つめていた。

「ん……?」

 ようやく僕の存在に気付き、花純さんが目を見開いて口をあんぐりと開ける。

 悲鳴を上げたいのだろうが、どうやら声が出ないらしい。

『おはようございます』

 仕方なく僕はペコっと頭を下げた。

 花純さんは怪訝な顔で小刻みにカクカクと顎を引き、ポソっと独りごちる。

「昨日の……夢じゃ無かったんだ」

 さようで。

 出て行けずに部屋に留まるしかなかったのを、心底申し訳なく思う。

「七時か……。とりあえず朝ごはん食べに行かなきゃ」