「秋元さん、戻りなさい 」


そんな声が後ろからするのに、振り返ることもせず

廊下の床を思いきり蹴った。


運動したらダメだから、こんなに走ったことも

きっと今までにない。


でも、とにかく怖かった。


入院して翔馬先生の優しさに触れてしまってから

弱さが次から次へと出てきて

今は翔馬先生しか受け入れられない。


なんでっ、私こんなに弱くなっちゃったの

もともと弱いけどさ、ここまでじゃなかった。

相手に優しさまで求めてしまうなんて…
本当の自分の醜い心までもが出てくる。



いつもなら発作が怖くて、結局は自分の体を考えてるのに

こんな弱い自分嫌で、

もうどうなってもいいやって自暴自棄になって、走り続けた。




…ビュー

夜の風が、体に当たって冷たい。


夜中で他の看護師さんやお医者さんに会わなかったから


止められるのこともなく外まで行ってしまった。



後ろには病院の出入り口があるけど、


看護師さんは追いかけてこない


「はぁ…はぁ うっっ 」


安堵して息切れした呼吸を整えると、


病院の庭のアスファルトにしゃがみこむ。


それでも、嫌な感じにドクンと波打つ心臓…