「僕は…こう思うんだ」




「は、はい…ご主人様」


妙に敏感に反応する肌に、指を這わしながら、

男は優しく微笑みながらも、心の中では冷めていた。

(女ってやつは…)



どうせ、どうなるか…どうやるのかわかっている。


だから……。



身を任せ、頬を赤らめ、期待している女の表情に、

男は逆にやる気が、萎えた。

もうシミュレーションは、できている。


だから、男は最短距離を選んだ。


「あ」

ブリッジのように、身を反らした女が、

満足そうに果てたのを確認すると、

男はベットから離れた。


「まったく…」

女が果てたからか…静かになった部屋に、外の喧騒が少し響くようになった。

ポケットから、ハンカチを取り出し、中指を丁寧にふきながら、男は窓の方に顔を向けた。

グラウンドで、青春を謳歌する学生達の様子を見つめていた。

男は元気な生徒達に、鼻を鳴らした。



「あらあ?健康的な若者に、珍しく惹かれてるのかしら?」


いつのまにか、男の前に、白衣を着た女が立っていた。

女は、保健室の女医だった。

女医はベットの上で、気を失っている女子生徒を見て、目を細めた。


「不健康なことをしてたみたいだしね。幾多君」

窓を見ていたのは、幾多流だった。

幾多は女医の言葉に、肩をすくめて見せた。


「不健康ですかね?」



幾多はそれ以上何も言わずに、

窓の外を見つめ続けた。


女医は少し口を尖らせると、幾多に近づき、

彼の胸に手を置いた。

「いじわるね。あたしの場所で、あんなことをして」

指で、幾多の胸をなぞった。

しかし、幾多は何の反応も起こさずに、

ただ…窓の外から目を離さない。


「何を見てるのよ」

女医は幾多の肩越しに、外を覗いた。

「また別の女を見つけたの……?」

幾多の視線を確認し、見てる方向に顔を向けたが、

女はいなかった。


1人の男子生徒が、歩いているだけだった。