2人の男を隔てる机の真ん中に並んだ…二枚のカード。

それは、罪と罰。


噴火を描いたカードと地獄を描いたカード。


「へえ〜」

長谷川の前に座る男は、そのカードを懐かしそうに見た。

それから、軽く吹き出した。

「――失礼…プッ」

謝ったが、また軽く笑ってしまった。

そんな男を、長谷川はただじっと見つめていた。


真剣な長谷川の視線に気付き、男は肩をすくめて見せた。


「そんなに恐い顔するなよ。正流」

馴れ馴れしく話しかけてくる男の両手には、手錠がかかっていた。


長谷川は…ため息だけを発した。

「…」



しばし無言になってしまう。

普通なら、質問をしなければならないが、

この男には、無意味だからだ。


なぜなら、今回の事件そのものには、意味がないからだ。


幾多は…、



自分に会いに来ただけだからだ。



クスッ。



幾多は笑うと、机の上に手錠をかけられた両手をのせた。

「これじゃあ〜選びにくいよ」

苦笑し、にたっと口許を緩める幾多に、

長谷川はやっと口を開こうとした。


その瞬間、唇の動きだけでそれを見抜いた幾多は、

口をはさんだ。


「噴火は感情…罪を表し。地獄は罰を意味する」

幾多は長谷川の目を見つめ、

「懐かしいなあ〜。君が、最初にニ択したときのカードだ」


「…」

長谷川は口を閉じ、ただ幾多の目を凝視した。


「だけど…」

幾多は、手錠のかかった手で二枚のカードを掴むと、

長谷川から視線を外さずに、

「罪や罰…そんなカードなんては、無意味だ。僕なら、ナイフを一本用意する」



「それが、今回の真相か?」

長谷川は、幾多を睨んだ。

「恐い顔をするなって」


幾多は机の上に左肘を立てると、頬杖をついた。


「皺になるよ」

右手で、二枚のカードをひらひらさせた。

もう彼の手からは、手錠が消えていた。