音楽が流れる中、ゲームは始まった。

間違いがないというゲームのルールは、簡単だった。

机の上にある月のカードと、太陽のカード。

それを今から、男があたしに問いかける質問に対して、月と思うか、太陽と思うかで、

どちらかのカードを、あたしが手に取るだけだ。


男は深呼吸すると、あたしに告げた。

「このゲームを始める前に、私の名前を言っておきましょう。このゲームの正統性を示すために…」

「あっ!」

あたしは素っ頓狂な声を上げて、手を叩いた。

「長谷川さん…長谷川さんでしたね」

名前を思い出したことが、嬉しそうなあたしの反応に、

長谷川正流は、自分の膝の上に置いてあったノートに、ペンを走らせた。


「あらあ?」

あたしは、首を傾げて、

「…どうして知ってるのかしら?」


改めて、あたしは目の前に座る長谷川を見た。

あたしを閉じ込めているのは…知り合い?


そう思うと、あたしの全身に、悪寒が走った。



「木野さん」

長谷川はじっと、あたしを見つめ、

「初めても…よろしいですかね?」

その視線の鋭さに、あたしはただ頷いた。



長谷川は、あたしの目を見つめたまま…おもむろに最初の質問を口にした。


「家庭生活は、月ですか?太陽ですか?」



「はあ?」

あたしは質問の意味が、わからなかった。

「ど、どういうことですか?」

あたしの困惑にも、長谷川は動じずに、トーンを変えることなく冷静に言った。

「直感で構いません」

しかし、狼狽えるだけで、こたえることのできないあたしに、長谷川は自らの緊張を一回解くかのように、また笑いかけた。


「でしたら、違う質問を先にしましょう。太陽と月…どちらが好きですか?」


その質問は、あたしにとって簡単だった。


あたしは、月のカードを手に取った。