幾多は前を向くと、バックミラーに映る自分を見て、

「少なくても、ここにはない。勿論....この国にもね」

幾多の言葉に、女は瞼を落とし、

「どうすれば.....何事もなく過ごせるのでしょうか?」

「そうだな...」

幾多は笑いながら、悩む振りをして、

「どこにも行かずに....引き蘢る。それもある意味正解だな。でも、一番の答えは...」

女は、バックミラーに映る幾多に目をやった。

幾多は無表情になると、

「ないよ」

とこたえた。

「え?」

驚く女に、幾多は微笑んだ。

「だから....強くならないといけない。心を鍛えなくてはならない。何事にも負けない心を持つ。例え…相手が法に守られていてもね」

「.....」

「敢えて言うと....自分の信念を持つ。それくらいかな」