何にしよう、と橘がつぶやいたところで。
「橘、1000メートル走やんねえ?」
男子の声。
「まじで?」
「お前が走ったら、ぜってー強いから」
「べつにいいけど……やりたいひといないの」
「いる? 逆に」
「知らねえ」
橘が1000メートル走。たしかにぜったい速いと思うけど、橘はいいのかな。
「んー。じゃあおれ、走る」
──頼まれたらね。思い出す。
橘、頼まれたら、断らないつもりだったのかな。
本人の意思なく決まることも多いとはいえ、推薦ではなく、ただ、会話として聞かれただけ。
断っても平気な場だと感じたけれど……でもなんだか、橘だなと思った。気をつかってしまうところだとか。もしかしたらこれが、かっこつけ、なのかもしれない。



