手にハンカチを持っている天敵が、隣にやってきた。 いつも通り、さっさとほかのひとの席に行って、食べてくれていいんだよ。念を送る。 すると、その念の甲斐があってか、こちらを向いて──。 「あはは、茅田(カヤタ)さん、太りそう!」 念の甲斐もなんもなかった、こいつはこういうやつだった。こんちくしょう。 「うっさい、あんたのせいだし」 「おれのせい? まじで? なんで?」 「なんでって……」 顔を見ると、口角を上げた、お得意の表情の彼と目が合った。 「うん? 言えないの?」 ……っ、言えるか、ばか。