そろそろきみは、蹴られてくれ。


再生ボタンが押され、予告編が流れる。ひえ、もうこわいんだが??


思ったんだけど、これ、だれも得しない映画鑑賞なのでは……。いや! いまならいける、いけるよ紗奈! 耐えよう。耐えて見よう。


そして褒めてもらおう……。


本編がはじまり、わりと最初のほうで暗闇から女がぼうと現れた。


「うわああ!!」


こわいこわいこわい! 暗闇からひとが出てくるだけでもこわいのに! ぼうって突然湧くなよ! 照明器具たくさん置いて、暗闇からの出現を防ぐという策に出るぞ、湧き潰しするぞ! やめてよ! こわ!!!


「紗奈ちゃん、まだ現れただけ……」

「現れたらこわいじゃん!」

「大丈夫? やめる?」

「やめない……」


橘の心配そうな瞳を見て、意地が折れかけるのを感じた。


折れない! わたしはこの意地を貫き通すんだ!


──序盤でいきなり叫んでごめん。