「していい?」
「……っ、うるさい」
「いい?」
「ずるいよ、橘ばっかりが、ずるい」
「うん、ごめん。……でもおれ、余裕ない」
「……そういう言葉も、ぜんぶ、ずるい」
ほんとうに、ずるいよ。橘。
うん。ささやき混じりにつぶやいて、
「するよ」
わたしの両手首をそれぞれ、てのひらで包む。
それをわたしの耳よりも高い位置にもっていって、校舎の壁に背をつかせた。
顔が寄せられていく。
花火の音がした気がするけれど、心臓の音な気もして、もう何もかもがわからない。
「んう!?」
噛み付くようなキスに驚いて、声がもれてしまった。
ああ、これは、ものすごいやつだ。
だから、壁に背をつかせたの? 楽なように。
倒れてしまわないように。



