そろそろきみは、蹴られてくれ。






「なんで? 早くない??」


出口から姿を現した橘がいちばんに発したのは、おもちゃを没収されたこどもみたいな表情でこの言葉だった。


「10分前くらいにゴールしたよ」

「えー! 紗奈ちゃん、真咲くん、すごいね!」


花乃はニコニコしながら手を叩いているけれど、すこしだけ疲れも浮かんでいる。


「スタッフさんに頼ることなくゴールしたい! って意地になってやってたら、ぐるぐるぐるぐる迷っちゃったんだよね……」

「そう! あの迷路、難しすぎだって……。真咲も紗奈ちゃんも、異常なスピードだよ。だっておれらより5分も遅れてスタートしたのに」


たしかに、ものすーっごく早くついた自覚はある。


迷ったのも1回だけだったし。


「なんでそんなに早かったの? 迷路得意?」

「得意っていうか、うまくいったっていうか……」


胸の前で手を振る篠山くんに、「いやいや!」と声を張る。


「篠山くん、すごかったんだよ! 迷ったとき、1個じゃなくて、『2個戻ろう』って言ってくれたのがあってて!」


2個戻って、来た道と反対側を進んで、その先の分かれ道をせーので決めて……。そしたら、なんとゴールした。


スタッフさんに、今日いちばんのタイムだってびっくりされたくらい。


篠山くん、宝くじ買ったら当たるんじゃないかな……強運の持ち主。