そろそろきみは、蹴られてくれ。



花乃と橘が先に迷路に入り、わたしたちはその5分後にスタートする。


よーし、負けないぞ!


炎メラメラの状態で篠山くんを振り返ると、彼は静かにわらった。


花が咲いたような笑顔。爽やかな笑顔。そして、穏やかな笑み──。なんでも似合うな、天才か??


いまのこの笑みは子どもを見守るのにちかい気がしないでもないけど、そんなことを考えたのは思考から抹消する。


「気合いたっぷりだね」

「うん! ふたりに負けたくないし、ゴールもしたい!」


うなずいた彼が、「おれも」と賛同を示した。それからちょっとだけ苦い顔でわらって、


「……おれ、実は今日、楽しみすぎてあんまり眠れなかったんだ」

「そうなの!?」

「ん、意外?」


『意外』の意味を確かめるようにして、いちどつぶやく。