そろそろきみは、蹴られてくれ。



わたしもくちもとに手をやる。


にやける。


それと、あと。


うれしすぎて……泣いちゃいそうだ。


くちびるの端のほうに手がふれて、橘の指先の熱を思い出してしまった。


あわてて動かすと、その拍子にくちびるにあたって。


──思い出す。忘れることなんてできない、しない。


どんなにテンパっていたとて、これはぜったい、忘れられないと思った。


思いながら、キスをもらった。


「おれも、……はじめて」


長い睫毛の合間から、橘の瞳が覗く。


捉えられて、息を飲んで。


でも、もう、いま。


──……逃げるつもりもない。