そろそろきみは、蹴られてくれ。



「すごいなぁ……」


微笑んだ花乃の隣で、あの告白は信じられない、ともういちど思った。


今度は、橘の態度から信じられないという理由じゃない。


こんなに素敵なひとが、わたしをだなんて。そういう意味だ。


そりゃ、橘はちょっと……いやだいぶ……? おかしいな、やめてくれよ、思わせることもしてくるけど。


そんなの、ぜんぜんだ。


もっともっと、すごいんだから。


まばたきの回数が多くなって、階段を踏み外しそうになってしまった。


落ち着け。深呼吸をする。


昇降口で靴を履くと、無性に、明日が恋しくなった。