「え、何、なんで。こっち向いてよ」 「いまこっち見んな、ばか」 右の頬から顎にかけて、てのひらを添える。 「……あつ」 つぶやく。熱い。 こんなところ、ぜったい、見せるわけにいかない。 「紗奈ちゃん怒った? おれ、怒らせた?」 「怒ってない!」 「えぇ、怒ってるじゃん……」 ほんと、いま、こっち見ないでよ。 「紗奈ちゃん」 優しい声のあと、手首に自分以外の熱が伝わって。 あ、と思ったときには、もう。 「顔、見せて」 真剣な顔をした彼に、手をどけられていた。