そろそろきみは、蹴られてくれ。



「わたしまでドキドキしてきた……」


100メートル走の選手が、所定の位置についた。花乃が胸に手を当てながら深呼吸をしている。


「わたしも、心臓が……」


なんていうんだろ、これは、──痛い?


心臓が痛い。えっ、これは、体育祭どころじゃないな。やっぱり痛くないってことにしよう。うん。


「大丈夫だって」


橘は苦笑しているけれど、ほんとう、ものすごく緊張する。


篠山くんを信じていないとか、応援しきれないとか、そういうことではない。


ついに体育祭が始まったんだな、という実感が強いのかもしれないな。と思った。