花乃が席に戻ったことで、沈黙がおりる。
「さっきの続きなんだけど」
前を向いている彼が、小さく口を開く。
「おれが紗奈ちゃんに会いたかったから、早く戻ってきたんだよ」
“ オレガサナチャンニアイタカッタ ” ?
橘がわたしに?
「普段はさ、紗奈ちゃんの隣に座るの、ちょっと緊張するってことで……ゆっくり帰ってきてたんだけど」
いちど言葉を切った橘が、息を吸い込んで続ける。
「伝えたら、吹っ切れたっていうか。アピールしまくろうと思ったっていうか」
ぱっ。彼がこちらを向いたような気がして、反対側に思いっきり、顔を背けた。



