そろそろきみは、蹴られてくれ。



「よかった」


眉を下げて、心底ほっとしたような顔。


何、その表情。初めて見た。


……そんな顔、しないで。


急にされると、うっかり、ときめきそうになる。なんて。


「で、急いで帰ってきたおれに、ご褒美ないの?」

「は? ないけど」


訂正。一生ときめきなんかするもんか。


「がんばったんですけど」

「いつも通り帰ってくればよかったのに」


休み時間ギリギリに帰ってくるでしょう。なんで今日はがんばっちゃったのさ。


「やだよ、だって、おれ……っと。これ以上はいま言えないね」


声をひそめた橘に、怪訝な顔を浮かべてしまう。