そろそろきみは、蹴られてくれ。



──橘がわたしのことをすきだと思ってくれている、だからこそ、思えたこと。


ひどく肯定していると、わかっている。でも、橘。わたしにたくさん与えてくれちゃうから。


わたしはたくさんたくさん、あまえてしまうんだ。


「……紗奈ちゃん、最近、ずるいよ」


てのひらで顔を覆って、目を閉じて、くちびるを噛む。


隙間から見えた様子に、思わず、心臓が跳ねた。


「紗奈ちゃん」


橘はつぶやいて、わたしの耳の裏のくぼみから顎にかけての輪郭を、そっとなぞった。


そのあとに言うつもりだった言葉は知らないけれど。


にがいとあまいの中間くらいで、優しく微笑む橘のことを、さらにさらにすきになってしまった。


……ほんとう、橘、ずるい。