ちょっと前まではきらっていたのに。いまでも思うことはあるけれど、もう、すきになってしまったのだ。
すきも、きらいも、自分では決められない。だから。
すきになった、わたしの負け。
すきになって、しあわせになっている、わたしの負けなの。
息を吐きながら、胸元の布を握りしめる。
心臓がありえないくらいに鳴り響いていて、喧嘩後みたいだ。実際、喧嘩後なのかな。わたしのいろんな想いの大喧嘩。
「……とりあえず、戻ろう」
だれに何を言ったわけでもなく、ここへ来てしまった。急いで戻らないと、無断での遅刻になる。
す。
き。
2文字を口パクすると、くすぐったくなってきて。
くちびるに手の甲を押しつけ、誤魔化した。



