「紗奈ちゃん、ごめんね。……また明日」 身をひるがえし、練習へ向かおうとする橘。 その背中じゃ、まだ、ダメだよ。 「橘……っ!」 咄嗟に掴んだ、彼の腕。 「……え」 見開かれた彼の目と、ばっちり視線が絡まって。ついうっかり、指先に力がこもる。 「あっ、え、あ……」 腕を掴んだのはわたしなのに、完全に無意識だった。固まる。 んん、咳払いをして。深呼吸をして。 覚悟を、決めた。