第二章 甘い香り

学校へ行く途中
甘い香りがした
それはお菓子の匂い
俺は気にはなったが俺の手元からだと気付き歩き出す
学校の生徒全てと先生共がくれだのなんだの言うから毎回困っている
だが
俺の作った菓子を食べてくれるのは悪くない
学校へ着くと生徒のほとんどが窓から顔を出して手を振る
「今日はどのクラス!?」

俺が毎日毎日生徒全てに作る訳も無く毎日違うクラスごと作っている
代金ももちろん貰うさ
「さぁ?楽しみにしてろ」
鼻で笑いながら中に入る

先生達がワクワクした顔をしていた
先生達にはよくしてもらっているから毎回渡している
「さざ波とフィナンシェ,どちらが良い?」
「さざ波かな」
先生達は和菓子が好きだと知っているが中にもたまには洋菓子を食べたいと言う人もいるのだ
だから
わざわざ聞いている
「ラッピングしてるからな」
和紙で包んだのを渡していくと校長が
「これは綺麗な和紙だね」
と言った
流石校長
いいものを分かっている
「だろ?京都のだ」
高々と言うと校長は閃いた様で校長室に入って行った
「高かっただろう?これをやろう」
校長室から手で来たと思えばその手には綺麗な和紙と包み紙がある
「くれるのか?これこそいいものだな」
一枚の和紙を手に取り見つめる
校長はニコニコと頷きすべてのものを渡してきた
俺は少し戸惑いつつも渡されるものを貰う
「また何か作る」
「頼むよ」
校長にさざ波を三個渡してその場を去ろうとすると担任の寿先生に呼び止められる
「神風」
「あ?」
俺が寿先生の方を向くと寿先生はニコニコとしながらプリントを持っていた
「プリント,これくらいでいいか?」
ざっと数えて三十枚か
「足りねぇ,後十枚は寄越せ」
寿先生にフィナンシェを渡しながら言うと寿先生は食べながら心配そうに
「そんなにか?無理してないか?」
と聞いてきた
俺にとってそれは無理とは言わないむしろ
「皆が頑張ってんのに俺だけズリィから」
と思う
「分かった,後十枚は持って来るな!」
「おう」
俺は誰かが頑張っているのをお前には無理だからと止めたりも何もしない
その頑張りを俺がどうこう言える訳ない
頑張りすぎんなよと気持ちを込めてお菓子を作る
俺は
仕事としてじゃ無く想いを伝えるために作っているのだ
努力は誰も見捨てない
努力することに意味がある
最初から諦めるよりかは遥かに良い
頭が悪いとか良いじゃ無く
諦めるか努力するか
頑張るか頑張らないか
だろう?
「今日はどのクラスだっけな?」
じっと教室の表を見つめる
寿先生の足音がした
俺が振り返ると寿先生がプリント十枚持ってきている
俺は一礼してそれを渡してもらう
「ありがとな」
俺の言葉に寿先生は
「こちらこそ」
と笑った
俺は嬉しくなりつつも家庭科室へと向かう
家庭科室には俺の本や器具,磨くもの,材料全てが揃っている上
もちろん買い足している分もある
「さて,作るか」
プリント四十枚を解きつつ器具を洗い乾かす
スイーツを作る時ボールが濡れていたりしないか?
それはいけない
なぜなら
分離や不味くなるからだ
例えるならチョコ
水の入ったボールじゃダメと書いていないか?
下準備とは
そう言うものも含まれている
「今日は飴細工とシーブーストを作るか」
まず先に飴細工
飴細工にも種類がある
流し飴
引き飴
吹き飴
の三つだ
流し飴はそのまんま
型に流して入れる飴細工
引き飴は例えば薔薇とかを作るために花弁を作るだろ?それだ
吹き飴は透明な器にする感じか?俺はよく分からなねぇから調べろ
その中で俺が今日作るのは引き飴だ
金色の薔薇を作る
飴を煮詰めている間俺はシブーストの下準備を始めた
皮を剥いたリンゴを2、3センチ角切りにすると板のゼラチンを冷水で戻す
「煮詰めているな,よしクレーム・ド・ターターを入れるか」
クレーム・ド・ターターは酒石酸水素カリウム要は飴細工をする時に入れるもの
それで固まり飴細工となるものができたら始める
シブーストを作り終えその上に薔薇を乗せた
「し!完成!」
放送室に行きチャイムを鳴らす
「一年三組至急家庭科室へ来い出来た」
ブチッと切り家庭科室へといくともうすでに来ていた
「………おう」
それに引いたのは
知らないふりをしてくれ