ポケットを漁って、レシートを引き抜くとテーブルへ投げた。それを上河内が拾い上げて目視する。息を呑んで、ジャブダルに見せに行った。

「全てミルクティだ」

 ジャブダルが驚いて顔を上げた。途端に、猜疑心が混じった瞳で田中を見据える。田中は、切迫した表情で弁明した。

「だからって、僕が寝ていなかったことにはならないでしょう。僕はミルクティは飲まなかったんです。でも、車に乗るとすぐに寝てしまう性質だから、寝てましたよ。皆さんと同じように!」
「じゃあ、なんでさっきは、自分のはミルクティじゃなかったって言ったの?」

 笹崎が不審な目で田中を見る。

「そんなの、記憶違いですよ!」
「ざーんねんながら、それだけじゃないんだよねぇ。レシートの時刻を見てください」
「時刻?」

 ジャブダルと上河内、笹崎がレシートを覗き込む。

「六時五分となっているが?」
「その時刻、大島さんは私達を歩いて駅まで迎えに来てたんです。当然、買ったのは大島さんじゃない。じゃあ、誰が買ったんでしょう?」

「だったら、猪口さんでしょう? 僕が買ったんだったら、わざわざミルクティなんて買いますか?」

「確かにそうですよね。自分で自分のアレルギー物質になる物を買うなんて、それは少しおかしいかも知れないですよね」

 上河内が訝って眉を顰めた。

「だからですよ」

 要はスッと、田中を見据えた。

「飲む必要がないから、なんでも良かったんです。アレルギー物質であろうと口にする気なんかなかったから同じ物を頼んだ。田中さん、これね、お店の監視カメラ観れば、一発で誰が買いに来たか解るから言い逃れしない方が良いよ。なんだったらあたしが、今ここで覗いてあげようか? まあ、パソコンないから出来ないけどさ」

「覗く?」
「え? どうやって?」

 ジャブダル一派が横でわちゃわちゃし始めたので、由希が慌ててフォローを入れる。

「警察! 警察が監視カメラ調べたら一発です! ねっ、要ちゃん!」
「あ~……だねぇ」

 自分が口を滑らせたことを自覚したのか、要はへらっと笑って相槌を打った。