「泣き声なんかどーだって良い! どうせどっかのドジっ子がすっころんで泣いてるとかだろーから」
「はあ!? そんなわけないでしょ。こんな山奥で――」
「良いから、答えて」
 
 笹崎の言葉を遮って、要はピシャリと告げた。そして、真剣な眼差しで訊く。

「交霊会後にテーブル周りの片付けしてたのって、笹崎さんだよね?」
「そうだけど?」
「そのとき、香油の皿は何個あった?」
「四つ全部あったわよ。あなたがタペストリーを引き抜いたから、床に転がってたけど。香油拭き取るの地味に大変だったんだから」

 小言を言われたが、要は気にせずに続けた。

「床に転がってた小皿の位置に、変なところはなかった?」
「ああ……」

 不意に、腑に落ちたように笹崎は呟いた。

「一皿だけ、離れた場所にあったのよ。割れてはいなかったんだけど、誰かが放り投げたみたいにソファの上に落ちてたの」
「それって、交霊会中に立っていた笹崎さんの後ろら辺じゃなかった?」
「そう。良くわかったわね」
「あ~……やっぱりねぇ」

 要は低く唸った。

「犯人、解ったわ」