怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~

 泣き出しそうな声音であかねが言った。要は注視するのを止めて、あかねのところへ歩いて行くと、受話器を耳に当てる。やはり、なんの返答もない。アンティークな電話の隣には、これまたアンティークな置き時計が置かれていた。要は無言のまま電話線を手にとって追って行く。カウンターの影に隠れたところで、線が切れてしまっていた。

「切れてるじゃない」

 恐々と呟いたのはあかねだった。要は冷静に線を観察する。断面は何か物に挟まって切れたり、自然故障したわけではなさそうだ。鋭利な刃物で切られたようにきれいな形で断線している。明らかに人為的に切断されたものだった。

「どうして?」

 田中は動揺して、不安を紛らわせるためか自分の指を噛んだ。

「これじゃ、固定電話は使えないね。スマホ使おう」
「それがね、要……もしかしたら、無理かも知れないわ」
「……は?」

 あかねに促されて向ったキッチンのシンクの上に、無残にも水でびしょ濡れになったスマートフォンが七台転がっていた。絶句しながら、自分のスマホを凝視している要に、あかねは気まずそうに話しかけた。

「シンクのタライの中に入ってたのよ。あのときは夢中だったから、気にしなかったんだけど、水を張ったタライの中にこれ、全部沈んでたの。それで、私半ば無意識にこれ取り出して、リビングに運んで大島さんにかけたの。冷静になってから振り返ったら、あれってスマホだったんだって気づいて……。やっぱりそうだったみたい」
「そう……。あれ? でもここも真っ暗だったはずだよね。よく手探りでいけたね」

 やっと顔を上げた要に、あかねの代わりに田中が答えた。

「ここは勝手口があるだろう。ドアの外に太陽光発電のセンサーライトが取り付けてあるんだ。室内でも勝手口の側で動くと点くことがあるから、それで見えたんじゃないかな?」
「そうなんです。キッチンについたのは良いんですけど、どこに何があるか分からなくて、しばらく手で探ってたら、外からぼんやりと明かりが見えたので、それで大方把握出来たんです」
「なるほどね。とりあえず、防水のスマホはもしかしたらいけるかも知れないから、かけてみよう」

 要は放り出されているスマホの中から防水加工が施されていると見られる三台を拾い上げて、うち二台をあかねと田中に配った。