「交霊会の最中に余計な電波を入れたくないんだよ。霊と電子機器は相性が悪くてね。霊障があるときには、電子機器に異常が起こるし、我々の気も余計な電波があると乱れやすくなるんでね」
「ふ~ん」

(でも、渡したくないな)

 要は相槌を打って見せたが、内心では懐疑的な目でジャブダルを見ていた。話は分かるのだが、ジャブダル達に大切な物を預けたくなかった。

「わたしも留学先で聞いたことあるよ。霊が現れると電子機器に異常が見られるって。あと、現れた場所の温度が下がるんですよね?」
「その通りだ。良く知っているな」

 ジャブダルは由希の共感に気を良くして満面の笑みを浮かべる。

「はい。じゃあ、これ」

 あかねがポケットからスマートフォンを取り出して、ジャブダルに渡した。ジャブダルはそれを大島に預ける。

「え~? 渡しちゃうの?」
「だって、壊れるより良いでしょ?」
「……確かに」

 手元に置いておいて、万が一にも壊れるよりは離れた場所に置いておいた方が安全か、と要は渋々大島に手渡した。秋葉と由希も大島に預ける。
 大島はポケットから折りたたんでいたビニール袋を取り出すと、丁寧にスマホを入れて行き、キッチンへ向った。なんとなくそれを見てから、要は座っててと秋葉達に言って、田中に近寄った。

「田中さん。ここってスマホのネット使えませんよね?」

 いきなり質問をされて、田中は一瞬きょとんとした。

「ああ、そうなんですよ。言ってなかったですよね。4Gとかいう回線ですかね? その電波が入って来ないみたいで。山の中だからだと思うんですけど」
「それは本当かね?」

 口を挟んだのは、ジャブダルだった。上河内と笹崎は少し慌てた様子で、スマートフォンを取り出して確認する。

「本当だわ。ネットに繋がらないわ」
「うっそ、最悪なんだけど……」

 上河内は少し困ったくらいの態度だったが、笹崎は思い切りイラついた様子だったので、田中は焦って言い添える。

「ああっ、でも、電話は使えますから」
「でも、笹崎さんがネット使えないって知らないって意外ですね」
(あんなに自撮写真上げてるのに)
「え? なんで?」
「おい、要!」

 秋葉がソファから立ち上がった。それを見て、あかねが眉を跳ね上げた。
 また、やったわね? 口ぱくで要に伝えたが、要はそれをスルーする。