麗夜は私のことを好きだ。

2年前の夏、私はそれを知っていた。

知ってて手を繋いだり、ニコって笑いかけたりした。

それから、私達はいつも一緒にいた。

だって、そうしたら何があっても麗夜が守ってくれるから、私は安全に生きられるでしょ?

当時小学6年生だった私達は、その日も一緒にいた。

学校から帰るところだ。

前から誰かが走ってくる。

私は避けなかった。

相手が避ければいいと思ったから。

相手も避けなかった。

走ってきた男と私はぶつかって倒れた。

男は持っていたものを落とした。

血のついた包丁だった。

私は叫ぶ。

男に口を手で塞がれて、その包丁を首元に突き立てられた。

周りの人が絶叫を上げて、通報しようとする人もいた。

「その子を離して!」

麗夜が叫んだ。

「麗夜…ありがとう」

怖くなかった。

麗夜が守ってくれるから。

私は麗夜を引っ張る。

「人質にするならこっちの方がいいよ。おじさん」

「…え?」

おじさんの力が一瞬緩んだ。

その隙に私は抜け出して、代わりに麗夜を掴んだおじさんと麗夜を車道に突き飛ばして逃げた。

「私のことを怨まないでね? もし怨んで仕返ししに来るなら、私はあなたを嫌いになるから」

こう吐き捨てて。

麗夜は私を好きでしょう?

じゃあ死んだあと私を殺しにくるわけないよね。