「わーっ、すごいねっ。私、こんな店初めて来たーっ!」

「詩音(しおん)…興奮しすぎ」

私は緑川(みどりかわ)詩音。

今日は親友の花音(かのん)…下原(しもはら)花音と2人でめちゃくちゃお洒落なお店に来てます!

「だって…こんな店…うぅ〜っ、綺麗すぎるーっ!」

「この店友達と一緒に来たことあるんだけどあんたほどの反応はしなかったよ。…何その嘘でしょ、とでも言いたげな顔は」

「だって、嘘みたいだもん。その友達、すっごく冷静な子なんだね!」

「あんたが感動屋なだけ」

「えぇーっ」

私の部屋と比べたら、全然綺麗だと思うけど…。

そんなふうに考えながら、空いている席を探す。

「あ、詩音。ここ空いてる。ここに座ろう」

「うんっ!」

「はしゃぎすぎ。一緒にいるこっちが恥ずかしいわ」

「えーっ」

てゆーか、本当にここ綺麗だなぁ…。

キョロキョロと辺りを見回す私を花音は呆れた表情で見ていた。

——その時。

「あんたはこんなに汚(けが)れてるのに、あんたがいたらこの店まで汚れちゃうよ」

ものすごい低い声が聞こえた。

うん?

今…誰かが誰かの悪口か何か言った…?