きっともう恋じゃない。



どれくらいそうしていたのかわからない。

ドアに凭れて座り込んでいるとインターホンが鳴った。

モニターを確認する気力もなく、返事も出来ずにいると、まおちゃんが出ていったきり鍵のかかっていないドアが開いた。


「姉ちゃん? もう外暗いんだから、電気くらい……って」


玄関の電気が足元まで伸びてくる。

薫の足音もバタバタと慌ただしく駆けてきて、わたしの前にかがみ込む。


「どうした? なんかあった……なんで、泣いてんだよ」


薫には縋れない。これ以上頼れない。

ぐっと耐えようとしたのに、無遠慮に顔を覗き込まれて、薫のこめかみにわたしの涙が落ちる。

泣き虫だって馬鹿にされるかな。

きっとデート帰りで浮かれ気分なのに、こんなところを見せてしまって申し訳ないやら情けないやらで余計に泣けてくる。


「眞央か」

「ちがう」

「眞央しかいないだろ。何があった」


まおちゃんも薫も、鋭くてきらい。

わかりやすいと言われたって、嘘をつくのが下手だから図星を指されたら何も言えなくなる。


舌打ちを落とした薫が立ち上がろうとするから、咄嗟に袖をつかんで止めた。

まおちゃんのところに乗り込む気だ。絶対に。

薫は普段散々わたしに当たりが強くても、肝心なときは味方になってくれる。

そして血の気が多いから、無茶苦茶なやり方で突っ走ってしまいがちだ。


以前もまおちゃんと衝突したことがある。

わたしが原因で怪我をするのもさせるのも嫌だった。


やめて、と消え入りそう声で言うと、薫はわたしを連れて部屋に入ってきた。

わたしはベッドに腰掛けて、薫は床に座る。