きっともう恋じゃない。



説明も弁解もできずにいると、まおちゃんは足を床に下ろして深く項垂れた。

中途半端なことをしなければよかったと悔やんでも、放った言葉は取り戻せない。


「別に俺は隠し事があったっていいと思ってる」

「眞央……」


自然とまおちゃんを『眞央』と呼べたのに、どこにも届いていないように思える。

まおちゃんはぴくりとも反応しなかった。


「でも、隠すなら隠し通せよ」


本当に、何も言い返せないくらい、まおちゃんの言う通りだ。

隠し事に隙があると不安になる気持ちも、暴くことで傷付けてしまうかもしれないことも、身を持って知っていたのに。


脱げかけた嘘はこれから先もずっとついてくる。


「眞央、あのね」


背中に縋るようにしがみつくと、まおちゃんは逃れたがった。

後ろに突き出した肘がわたしを突き放したがっていることに気付いていて、意固地になって抱きつく。


「好きなの、いちばん」


一度は諦めてしまった想いだから、もう二度と壊れないなんて言ったって、簡単には信じてもらえない。

わたしだって信じきるのはこわい。


まおちゃんの気持ちを置いてけぼりにしていることはわかってる。

それでも、駆け足で心を追い越していく不安の中身は紛れもなくまおちゃんへの恋心。


「和華」


急に振り向いたまおちゃんがわたしの肩を押す。

さっきまでの甘い雰囲気は消え去って、まおちゃんは口付けの前に見せたあの、苦しそうな顔でわたしを見つめる。


「付き合うの、やめようか」


息が詰まって声が出てこない。

まおちゃんの言ったことが信じられなくて、布団の上を爪で掻く。


なんで。だって、さっきまで触れられる距離にいて、キスをして、デートの話をしていたのに。


「ごめん。また連絡するから」

「眞央、まって」


部屋を出ていくまおちゃんを追いかけようとするけど、震える足は上手く立たずに床に転げる。

短い痙攣が足を伝って全身に回る。

引き攣った喉では引き止める声も出せなくて、這いずるように廊下に出たときにはもうまおちゃんはいなかった。