きっともう恋じゃない。



できたらいいな、とは思っていたけど、実際に約束を取り付けたわけでもないし、候補はひとつも考えていなかった。

近場で、と考えようとすると人混みは避けられない。

人気が少なくて、まおちゃんを退屈させなくて、と外せない要素を優先しようとすると家に留まることしか浮かばない。


「カラオケとか」

「和華が歌ってるところが想像できないんだけど。行ったことあんの」

「かおると前に行ったよ」

「それ何か歌った?」

「ううん。ほぼドリンクファイト」

「だろうな」


この返事はたぶん、遠回しに却下と言いたいんだと思う。

どうせ歌わないんだろって顔に書いてあるし。


「カラオケなんか和華が言い出すの珍しいな。そんなに行きたいところないんかよ」

「予行練習というか……今度、みんなで行くかもしれなくて」

「友だち?」

「そう、友だち!」


頷くと、まおちゃんの片眉がぴくっと上がる。


失言だったかもしれない。

新見くんと二人きりでの誘いは断り続けているのだけど、つい昨日、矢澤くんも一緒ならどうかと何度目かわからないお誘いのメッセージが届いた。

三宅さんとか、他の女の子も呼んでいいからって。

誘う誘わない以前に三宅さんは嫌がるだろうし、由麻ちゃんと陽日さんに声をかけてみるつもりで返事は保留にしてある。


ここで由麻ちゃんと陽日さんの名前を出して、変に勘繰られては困る。

そもそも、まおちゃんがいるのに断りきれなかったと思われて呆れられるのが情けないやら恥ずかしいやらで、まだどちらにも声をかけていないのに。


まおちゃんの表情がだんだんと訝しげになっていく。

友だちなんて限られているのに口を滑らせたのが悪いのか、かといって知り合いだと言った方が怪しかったのか、巡り巡って混乱状態。


「が、学校の、友だち」

「誰?」

「えっと、三宅さん」

「と? 他は?」

「他は……」


他、他なんて誰も出てこない。

同じ教室にいた子の名字、誰でもいいから思い出せと記憶を遡るのもむなしく、まおちゃんがため息をついた。


「さっきみんなって言ったろ。一人しかいないなら友だちでいいのに、どういうことだよ」


本当に、まおちゃんってこういうところが鋭い。