きっともう恋じゃない。



不機嫌の度合いをおくびにも出さないから、若干眉間のシワが濃いような気がする、程度ではまおちゃんな怒りが伝わってこない。

威圧感だけは半端じゃなくて、片手でしか塞がれていないのをいいことに抜け出そうとしたら、もう片方の手も壁に吸い付いた。


逃げられないって、自分でもわかる。

逃げたくないって考えてしまった自分もいる。

たぶん、それをまおちゃんは見透かしてた。


馬鹿にするみたいにほくそ笑んで、でも一瞬だけ苦しそうに顔が歪んで、くちびるを掠め取られる。

触れたくちびるに気を取られた瞬間、まおちゃんの手が背中と後頭部に回った。

抱き寄せられて、一層口付けが深くなれば、不慣れなわたしは固まってしまうしかなくて。


「ま、おちゃ……」

「だから、ちがうって」

「まお……?」


満足そうに笑っても解放してくれない。

それどころか拘束は一層強くなる。


呼吸を、自分の意思ではなくて人に、まおちゃんに操られていると思うとこわくなる。

それと同じくらい、高揚しているわたしがいる。

慣れてしまえばなんてことない感覚なのかもしれない。

知ってしまえば、知らなかったころには戻れない。


くちびるを割ろうとするやわらかい何かを受け入れたくて、でもまだ、それを知るのはこわくて。


ワンピースの裾を握っていた手を離して、必死にまおちゃんの胸を押した。