きっともう恋じゃない。



「じゃあさ、もっとコート区切ってたとえばバドミントンとかフットサルもできるってなったら参加する?」

「しなきゃいけなくなっても上手くサボるか理由をつけて逃げるかな……」

「逃げる! いいじゃん。そういう発想好き」


発表はないけどあとで紙は提出するというのに、大きな字で『サボる』って書かないでほしい。


運動が苦手なのはわかってくれた。

手加減してくれるとはいえ高校生かそれ以上の年齢の男の子を交えるのはこわい。

ストレッチの延長なら楽しめるかもしれない。


結構な意見は出したはずなのに結論がそんなだなんてあんまりだ。


新見くんの興味の先が矢澤くんに避けて、ようやく解放される。

十七時を過ぎてにわかに騒がしくなる窓の向こう側を覗くと、地上の交通量は増して行き交う人も増えていた。


授業が終わる間近になって配られた明日の予定表には、今日と同じく最後の時間にグループワークが組まれていた。


『将来、進路について』

漠然としていて、けど三年生に当たるテーマとしてはちょうどいい。


周りの意見を特別な輪に参加せずとも聞けるというのはありがたい。

メンバーがこの四人でさえなければ。

はっきりと言って、新見くんと同じでなければ。


三宅さんに心配されずともしっかりと根付いた苦手意識を本人を前にして隠せている自信がない。

かおるにいつも言われているのだ。

顔に出やすいわけじゃないけど、態度がわかりやすいんだって。


愛想笑いにも疲れて空返事をしてみても、新見くんは不思議そうに首を傾げるだけで懲りることはなかった。