きっともう恋じゃない。



雛のように三宅さんについて回って、三宅さんもそれを嫌がらなくて。

慣れない距離の縮め方にまごつきながらも話しかけ続けていると、階段の踊り場で三宅さんが立ち止まった。

涼しげな目元が細められてじいっと見つめられてたじろいでしまう。


「前に座ってる男、あんまり関わらない方がいいよ」

「前……って教室の席のこと?」

「いい噂聞かないから。ふらふらついて行っちゃだめ。連絡先を交換するのもおすすめしない」

「新見くんのこと、だよね」


三宅さんは昨日からわたしの隣の席にいるのだから、前の席と言われて想像した人は間違っていない。

いい噂を聞かない、の理由はわからなくても意味は飲み込める。

どうしてそんなことをわたしに教えてくれたのかは謎のまま、教室に戻ると最後の授業が始まる。


グループワークという名の一日の振り返りの時間。

それだけだと時間が余り過ぎるから、体育の時間の見学者についてを議題にディスカッションが行われたのだけど、これが耳の痛い話だった。

矢澤くんはバスケの方に参加していたし、新見くんはバレーとバスケに交互に入っていたから、時間中ずっと見学をしていたのはわたしだけ。

新見くんのずけずけと迫ってくる物言いに圧倒されながら、どうして参加しないのかだとか強制参加だったらどうするのかと根掘り葉掘り訊ねられる。