きっともう恋じゃない。



男女一緒だからとソフトバレーボールを使っているから、相手コートのちょっと素早い男の子にあっさりと拾われてしまったけど。

ローテーションも前衛も後衛も関係ない。アタックラインなんてただの線みたいな、本当にめちゃくちゃなルールのなかで、三宅さんだけがちゃんとバレーをしていた。

見学している子はおしゃべりに夢中で、端で寝ている子だっているし、わたしもストレッチさえこなせばもらえる単位でわざわざ運動をする気はない。


時折目を輝かせては、つまらなそうに目を伏せる三宅さんが物珍しくて、ずっと目で追っていた。


一時間の体育を終えて、クールダウンのあと学校へ戻る途中、意を決して三宅さんに駆け寄る。


「あ、あの、三宅さん」

「んっ?」


汗でぺたんこになった前髪を指先で梳いていた三宅さんは、始まる前に化粧を落としていたからか、面立ちは幼く雰囲気がふわっとしたように感じる。

運動している間は外していたみたいだけど、高く纏め上げた髪から覗く耳にはいくつものピアスがついていた。


「さっき、すごかった……スパイク打ってたし、レシーブも男の子のを上げてたよね」

「見てたんだ。入ればよかったのに」

「え、いや、わたしは運動全然だめだから」

「できてもできなくても、あの中ならあんまり変わらないと思う」


けらりと喉を鳴らして笑う三宅さんは、なんだか眩しかった。

陽日さんや由麻ちゃんとは全くちがうタイプの女の子。

溌剌とした明るさや朗らかさが垣間見得る一方で、竹を割ったような性格が滲む、清々しい子だ。