きっともう恋じゃない。






「バテモンのログインした?」


翌日、授業開始の五分前に教室に入る。

昨日と同じ席に着くと、すかさず前の席の新見くんが振り向いた。

菓子パンを食べながらもごもごと話しかけられて、頷き返すと新見くんは満足そうに口角を上げて正面に向き直る。


「仲良いの」

「え……」


昨日は一言も言葉を交わさなかったとなりの席の子から主語なく声をかけられた。

誰と?とは聞き返さずとも、新見くんを指しているのは明らか。


「よくない、と思う。昨日初めて話したから」

「そう」


小声で聞かれたから、小声で返した。

興味無さげにさらりと流されてしまえば会話は続かず、すぐに先生が入ってきて授業が始まる。

出席確認で『三宅 望』と呼ばれたその子のハスキーな声が耳の奥にしばらく残っていた。


わたしの方から三宅さんに興味が湧いたのは2コマの座学を終えたあと、近くの施設を借りた体育の授業でのこと。

別の教室に分かれていた同学年の子たちを交えてストレッチをしたあと、ほとんどが見学を決め込むなか集まった面子で球技をするようだ。

三宅さんは別のクラスにも知り合いはいないみたいで、ひとりきりだというのにバレーボールに参加していた。


男女混合、ワンバウンドあり、ボレーは五回まで。

そんな無茶苦茶なルールのなか、低めのネットだというのに誰も飛ぼうとしない。

どちらのコートにも落ちないボールを追っていると、ネットが霞んで見えてくる。

退屈と欠伸を噛み締めたときだった。

ネット寄りに高く上がったボールを三宅さんが床を蹴り上げて飛び、打ち下ろしたのは。